開発環境の構築
必要な環境
OpenXOPSの開発には、「Visual Studio」と「DirectX SDK」の2つが両方とも必要です。
工夫次第で、他の環境やライブラリで代用可能な場合もありますが、このページでは Visual Studio と DirectX SDK を揃えることを中心に説明します。
「開発・技術資料」ページで解説している通り、OpenXOPSは以下の環境で開発しています。
OS : Windows11 Pro
開発環境 : Microsoft Visual Studio 2019
使用SDK : Microsoft DirectX SDK (June 2010)
基本的には、上記と同じ環境を用意すれば、OpenXOPSをコンパイル可能です。それ以外のゲームエンジンや処理ライブラリは、基本的に必要ありません。
このページでは、環境構築時のポイントのみの説明に留め、具体的なインストール手順や詳細な利用方法に関する説明は省略します。必要であれば他の文献を当たってください。
また直接コンパイルとは関係ないものの、Doxygenの構築についても簡単に解説します。
各ソフトウェア・パッケージの概要
Visual Studio
Visual Studioは、Microsoftが開発している総合開発環境です。プログラミング環境と解釈しても間違いではありません。
Visual Studioは、数年ごとにバージョンアップされており、同一年のバージョンでもエディション(種類)があります。一部エディションは有料ですが、「Community」ならば無料で使用できます。OpenXOPSをコンパイルするには無料版の Community で十分です。ただし、30日以上使用する場合は別途アカウント登録が必要です。(無料)
このページでは、無料版の Community を利用する前提で解説します。
DirectX SDK
DirectX SDKとは、同じくMicrosoftが無料で公開しているSDK(ソフトウェア開発キット)の1つで、DirectXプログラムを作成するために必要なライブラリなどを含んでいます。
DirectX SDKも、過去には数ヵ月ごとにバージョンアップされており、各バージョンは年月で表されています。2025年12月時点で、最新版は2010年6月に公開された「June 2010」です。
Visual Studio 2019 と DirectX SDK の導入
本節では、Visual Studio 2019 と DirectX SDK (June 2010) を入手し構築する方法について解説します。
Visual Studio 2019
無料版のVisual Studio Community 2019は、以下の公式サイトから入手してください。
・Visual Studio Toolsのダウンロード
・Visual Studio 2019 リリースノート
インストール時には「C++によるデスクトップ開発」と「C++によるゲーム開発」を有効にする必要があります。
DirectX SDK (June 2010)
DirectX SDK (June 2010) は、以下の公式サイトから無料で入手できます。
・DirectX Software Development Kit(英語)
なお、DirectX SDK (June 2010) のインストーラーには不具合があり、インストール時に既に新しい「Visual C++ 2010 再頒布可能パッケージ」(Visual C++ 2010 Redistributable Package)が入っていると、エラー:S1023でSDKのインストールに失敗します。
Visual Studioをインストールする前に先に DirectX SDK (June 2010) をインストールするか、あるいは一度新しいVisual C++ 2010 再頒布可能パッケージを削除してから DirectX SDK (June 2010) をインストールし、後からVisual C++ 2010 再頒布可能パッケージの最新版を再度インストールしてください。
Visual Studio 2019 の設定とコンパイル
プロジェクトファイルの設定
Visual Studio 2019上でプロジェクトファイルを作成してください。テンプレートは「Windowsデスクトップウィザード」を選択し、アプリケーションの種類では「デスクトップアプリケーション(.exe)」、かつ「空のプロジェクト」にチェックマークを入れます。
作成後、プロジェクトファイルが生成されたディレクトリに、OpenXOPSのソースファイル群を全て移動してください。
次に、Visual Studio 2019画面内(ソリューションエクスプローラー)にファイルを追加します。全ての.cppファイルと.hファイル、resource.rcを追加してください。icon.icoファイルは追加不要です。
メニュー[プロジェクト]→[プロパティ]を開き、プロジェクトファイルの一部設定項目を変更する必要があります。
| Debug | Release | |
|---|---|---|
| [詳細] 文字セット | マルチバイト文字セット | マルチバイト文字セット |
| [C/C++]→[コード生成] ランタイム ライブラリ | マルチスレッド デバック(/MTd) | マルチスレッド(/MT) |
加えて、同プロパティ内で DirectX SDK を使用するための設定も行ってください。
※DirectX SDKはインストールが完了しただけでは利用できません。
・インクルード ディレクトリ:「$(DXSDK_DIR)include;」を追加
・ライブラリ ディレクトリ:「$(DXSDK_DIR)lib\x86;」を追加
64bit-OSをお使いの場合でも DirectX SDK のLibファイルはx86(32bit)を使用してください。x64を指定するとエラーになります。
Releaseモードにおいては、デバック情報の生成 を「いいえ」に設定することを推奨します。
コンパイル時にmain()関数が存在しない旨のエラーが生じる場合、プロジェクトファイルの作成手順が正しいか確認するか(推奨)、Debugモード・Releaseモード双方で以下の項目を変更します。
・[C/C++]→[プリプロセッサ] プリプロセッサの定義 『_CONSOLE;』→『_WINDOWS;』
・[リンカー]→[システム] サブシステム 『コンソール (/SUBSYSTEM:CONSOLE)』→『Windows (/SUBSYSTEM:WINDOWS)』
使用方法
Visual Studio 2019 のファイルの編集方法やコンパイル方法など詳細な使用方法は、各自で確認してください。Visual Studioの詳細な使い方は、本ページの内容から外れるので割愛します。使い方を解説した専門書や情報サイトなど、他の文献を当たってください。
なお、DebugモードとReleaseモードを切り替えて使用することを強くお勧めします。(詳しい使い分けの解説は省略します。)
DirectX SDKには様々なサンプルや開発用ツールが入っていますが、OpenXOPSをコンパイルする上では(SDKを)直接触る必要はありません。
【参考】 Doxygenの構築
Doxygen(ドキシジェン)は、ソースコード内の記述を元にドキュメントを生成する ドキュメンテーション・システム です。OpenXOPSのソースコードに記述されているプログラムを元に、ブラウザで観覧可能なドキュメントを自動で生成します。
開発者に対してプログラムの可読性を確保するために使用する物で、OpenXOPSのコンパイルには直接関係ありません。Doxygenを利用しなくても、開発することは可能です。しかし、関数の引数や戻り値などをブラウザ上で確認できるなど、構築する利点はそれなりにあると思います。
基本的な使用方法 (入手・設定など)
Doxygenの最新版は、以下の公式サイトから無料で入手できます。
・Doxygen Downloads(英語)
ページ内のWindows版を入手してください。
OpenXOPSで使用しているのは 1.8.9.1 ですが、(全く同一のバージョンでなくても)近いバージョンであれば問題なく動作すると思われます。
いくつかのドキュメント生成方法があります。
今回はVisual Studioを設定し、コンパイル時に毎回自動的にドキュメントを出力する方法を紹介します。
上記でダウンロードしたDoxygen(本体)を、プロジェクトファイルのあるディレクトリに配置します。
次に、Doxygenの設定ファイルを用意します。OSDN(旧:SourceForge.JP)のプロジェクトページから入手する(doxygen.conf)か、各自で用意してください。設定ファイルもプロジェクトファイルのあるディレクトリに配置します。以下、設定ファイル名が「doxygen.conf」である前提で説明します。
Visual Studioで、メニュー[プロジェクト]→[プロパティ]を開き、「ビルドイベント」のビルド後に実行するコマンドラインを以下のように設定します。
| doxygen doxygen.conf |
ファイルの配置やプロジェクトファイルの設定を誤っていなければ、Visual Studioでコンパイルを実施するたびに、常に最新のドキュメントが生成されます。
OSDNのプロジェクトページから入手した設定ファイルを使っている場合、プロジェクトファイルのディレクトリ内にある /doc/html/ に生成されます。同フォルダ内にある index.html をWEBブラウザで開いてください。(どこかにショートカットを作っておいても良いかもしれません。)
応用方法
別途Graphvizを入手して組み合わせれば、クラスの継承関係の図も生成できます。
Doxygenの詳しい使用方法は、公式ドキュメントや解説サイトをご覧ください。

